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なぜ家庭血圧が大切なのか?New

2025.10.31

高血圧治療においては、診察室で測る血圧(診察室血圧)よりも、ご自宅で測る血圧(家庭血圧)の値を重視します

その理由は、家庭血圧の方が、心臓や脳の血管病(心血管イベント)の発症リスクをより正確に予測できることが、多くの研究で示されているためです。

診察室での測定値だけでは、実際の血圧の状況を見誤ってしまう可能性があります。

  1. 乖離のパターンと注意点

診察室血圧と家庭血圧の乖離には、主に2つのパターンがあります。

(1) 白衣高血圧(White Coat Hypertension

  • 状態: 診察室血圧は高い(例:140/90 mmHg以上)が、家庭血圧は基準値未満(例:135/85 mmHg未満)の場合を指します。
  • 説明: 病院に来ると緊張や不安から血圧が一時的に上昇してしまう現象です。家庭での血圧が安定していれば、通常は薬物治療が必要ない場合もありますが、将来的に真の高血圧や糖代謝異常(糖尿病など)を発症するリスクが高まるため、生活習慣の改善と定期的な経過観察が必要です。

(2) 仮面高血圧(Masked Hypertension

  • 状態: 診察室血圧は基準値未満(例:140/90 mmHg未満)ですが、家庭血圧や24時間血圧測定では基準値以上を示す状態です(家庭血圧135/85 mmHg)。
  • 説明: 診察室では正常に見えても、実際の生活の中(特に早朝や夜間、仕事中など)で血圧が高くなっている状態です。仮面高血圧は、白衣高血圧よりも臓器障害や心血管イベントのリスクが高く、見過ごすと危険なため、家庭血圧の測定が非常に重要となります。
  1. 正確な家庭血圧の測定方法の注意

家庭血圧測定は、正しい方法で行わないと意味がありません。以下の条件を守るようにお願いします。

  • 測定機器: 上腕で測るオシロメトリック法の血圧計(カフ式血圧計)を使用してください。
  • 測定環境: 静かで暖かく、リラックスできる環境で測定します。
  • 測定姿勢: 椅子に座り、背もたれにもたれ、両足を床につけて測定します。測定中は会話をしないようにします。カフは心臓と同じ高さになるようにします。
  • 測定前: 測定前は12分間、安静にします。
  • 測定のタイミング: 朝と晩の12測定することが推奨されます。
    • : 起床後1時間以内、朝食前、および朝の降圧薬を飲む前に測定します。
    • : 就寝前に測定します。
  • 測定回数: 各機会で2回ずつ測定し、その平均値を記録します。
  • 記録: 測定値は毎日長期間記録し、診察時にご持参ください。
  1. 生活習慣における具体的な注意点

血圧を下げるためには、生活習慣の改善が治療の土台となります。

(1) 食事に関する注意

  • 減塩: 食塩摂取量を16g未満とすることを目標とします。減塩には、脳心血管病や死亡率の抑制に有効であるというエビデンスがあります。
  • 栄養バランス: 野菜や果物、低脂肪乳製品、魚、豆、未精製穀物などを積極的に摂るDASH食パターンDietary Approaches to Stop Hypertension)が推奨されます。特にカリウム(野菜や果物に多い)の積極的な摂取は、血圧低下に有効です。
  • 体重管理: 適正体重BMI 25 kg/m$^2$未満)を維持します。

(2) 運動に関する注意

  • 有酸素運動: 軽〜中等度の有酸素運動を毎日30分以上、または180分以上を目安に実施することが有効です。ウォーキング、ジョギング、水泳などが推奨されます。
  • レジスタンス運動: 有酸素運動に加えてレジスタンス運動(筋力トレーニング)を組み合わせることで、さらなる降圧効果が期待されます。

(3) 飲酒・禁煙に関する注意

  • 節酒: アルコールの摂取は、エタノール換算で男性は120mL以下(日本酒1合、ビール中瓶1本など)、女性は1020mL/日以下に制限します。休肝日を設けることも重要です。
  • 禁煙: 禁煙は心血管病の予防のために最も重要です。

(4) その他の注意

  • 睡眠とストレス: 良質な睡眠68時間程度)を確保し、過労やストレスを避けるようにします。ストレスは血圧変動を大きくする原因の一つです。
  • 体位変換: 特に降圧薬を服用している場合や、血圧変動が大きい場合は、急に立ち上がったり、動いたりすると立ちくらみやめまい(起立性低血圧)を起こす可能性があります。急激な動作を避け、ゆっくり行動するように心がけてください。
  1. 薬物療法中の注意
  • 症状が出た時の対処: 立ちくらみやふらつき、全身倦怠感などの低血圧症状を自覚した際には、そのタイミングで家庭血圧を測定し、記録を残してください。
  • 薬剤の調整: 低血圧症状と血圧の低下が一致した場合、薬剤の減量や投与時刻の変更を医師と相談することが必要です。特に季節の変わり目(夏場は脱水による血圧低下、冬場は血圧上昇)には、血圧が大きく変動する可能性があるため、注意が必要です。

 


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