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よくある質問 「抗CGRP関連製剤はいつまで続けるの?」New

2025.10.31

Three-year treatment with anti-CGRP monoclonal antibodies modifies migraine course: the prospective, multicenter I-GRAINE study(抗CGRPモノクローナル抗体による3年間治療は片頭痛の経過を修正する:前向き多施設共同I-GRAINE研究)」
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● この研究は、イタリアで行われた、片頭痛の予防薬(CGRP製剤)を長期間(3年間)使ったときの効果を調べた大規模な調査(実社会研究)です。
この研究で使われたCGRP製剤には、日本でも使われているフレマネズマブ(商品名:アジョビ)などが含まれます。

● 研究の目的
片頭痛の予防注射であるCGRP製剤を、1年以上の長期にわたって使うことで、片頭痛が根本的に改善していくのか(疾患修飾効果)どうかを評価すること。

●対象となった患者さん
• 片頭痛の患者さん212名が参加しました。
• 対象となったのは、「慢性片頭痛」(月の半分以上頭痛がある)または「高頻度発作性片頭痛」(月に8〜14日頭痛がある)の患者さんです。

● 結果
1. 効果は使い続けるほど高まる
CGRP製剤を長期間使い続けることで、片頭痛の頻度が半分以下になる患者さんの割合(50%反応者率)が、継続的に増加しました。
治療期間 ≥50%反応者率 (片頭痛日数が半分以下になった患者さんの割合)
治療開始後 1年 :約53.8%
治療開始後 2年 :約65.0% 
治療開始後 3年 :約77.8%
これは、治療を長期間続けることで、片頭痛の頻度や重症度が改善し、片頭痛の「病態(病気の状態)」自体がより良い方向へ変わっていく可能性を示唆しています。

2. 頭痛薬の使いすぎが減少
• 月間の片頭痛日数(MMD)や、急性期頭痛薬(トリプタンなど)を使う日数も、3年間で大きく減少しました。
• 治療開始前に頭痛薬を使いすぎていた患者さん(薬剤の使用過多による頭痛)は、3年後にはほとんどいなくなりました(1.3%に減少)。

3. 安全性について
• 治療中に重篤な副作用(深刻な健康問題)は報告されませんでした。
• 注射部位の軽い反応など、副作用は少なく、3年間の治療継続は安全性が高いことが示されました。

結論:片頭痛の経過を良い方向へ変える可能性
この研究は、抗CGRP抗体による治療を3年間継続することで、片頭痛の頻度や負担が大幅に減り、片頭痛という病気自体の経過を良い方向へ変える(疾患修飾効果)可能性があることを示しています。これは、片頭痛の長期的な予防治療の重要性を裏付けるものです。

● 代表的な図表の解説
この研究の最も重要な結果を示す図表をイメージでご紹介します。
図 1:治療反応率の経年変化
この図は、治療開始からの経過時間と、片頭痛の日数が半分以下になった患者さんの割合(50%反応者率)の関係を示しています。
• 1年目、2年目、3年目と治療を続けるにつれて、グラフの線(反応者率)が着実に上昇していることがポイントです。
• これは、CGRP製剤の効果は短期間で終わるものではなく、長期的に継続することで、より多くの患者さんで効果が強まり、片頭痛が改善していくことを視覚的に示しています。
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この論文は、片頭痛予防治療の長期的な目標として、「単に症状を抑えるだけでなく、片頭痛の体質自体を改善していく」ことの可能性を示しました。ご質問に対する返答の一助となりますでしょうか?


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