お知らせ
2024.11.14
頸部ジストニア(痙性斜頸)は、首の筋肉が収縮することにより、頭や首が無意識に曲がったり回転したりする症状です。これらの動きは痛みを伴う場合があり、日常の活動を妨げることがありますが、治療により症状の管理が可能です。
【概要】
頸部ジストニアとは?
頸部ジストニアは、神経系に影響を与える疾患で、首の筋肉が無意識に収縮して緊張し、緩むことができなくなる状態です。この症状により、姿勢に影響を与え、痙攣や突然の動きが生じることがあります。痛みや不快感を伴う場合が多く、日常生活に支障をきたします。頸部ジストニアは「局所ジストニア」に分類され、体の一部で筋肉が痙攣する疾患群のひとつです。
頸部ジストニアの種類
– 一次性:原因不明
– 二次性:原因が特定されている場合
頸部ジストニアの発症率
頸部ジストニアは局所ジストニアの中で最も一般的なもので、日本では10万人あたり2.85人程度と報告されています。
【症状と原因】
頸部ジストニアの症状
頸部ジストニアにより以下のような無意識の動きが生じます:
– 痙攣:筋肉が緊張し、固くなり、弛緩しません。突然の筋肉の痙攣が見られることもあります。
– 振戦:腕などの体の一部が制御不能に震えます。
これらの無意識の動きにより姿勢が変わることがあり、例えば以下のように頭や首が動く場合があります:
– 頭が回転する
– 頭が前後左右に傾く
– 首と頭が前後左右に曲がる
これらの動きは、肩や首に灼熱感を伴う痛みを引き起こし、頭痛を伴うこともあります。
【頸部ジストニアの原因】
頸部ジストニアの正確な原因は不明ですが、大脳基底核(筋肉の動きを調整する脳の部分)の機能障害が関係しているとされています。
二次性ジストニアの原因としては以下が考えられます:
– 精神科薬の副作用
– 脳外傷
– パーキンソン病
– GNAL、THAP1、CIZ1、ANO3遺伝子の遺伝的変異
【頸部ジストニアのリスク因子】
以下の要因がある場合、頸部ジストニアのリスクが高くなります:
– 家族に同じ症状を持つ人がいる
– ドーパミン拮抗薬や抗精神病薬を服用している
– 脳外傷を経験している
頸部ジストニアは誰にでも発症する可能性がありますが、30〜60歳の女性に多く見られます。
【頸部ジストニアの合併症】
症状が日常生活や特定の活動に支障をきたすことがあります。痛みや痙攣により首や顎、腕、胴体の動きが制限され、発話、嚥下、身体の調整にも影響が出ることがあります。重症例では、仕事や身の回りの活動が難しくなることもあります。放置すると、痛みや他の部位にもジストニアや筋肉の痙攣が生じる可能性があります。
【頸部ジストニアの診断】
医療提供者は、身体検査を行い、症状の確認および家族の病歴を含む医療履歴を確認します。CT、MRIや筋電図などの検査により脊髄の圧迫や神経の損傷を確認します。
【治療と管理】
頸部ジストニアの治療法
治療方法には以下が含まれます:
– ボツリヌス毒素注射
– 経口薬
– 理学療法
– 脳深部刺激手術
顎に触れる、または首のサポーター(カラー)を使用すると症状が緩和されることもあります。
【ボツリヌス毒素による治療】
ボツリヌス毒素A(ボトックス®)や毒素Bが使用され、ジストニアのある筋肉に注射されることで筋肉の収縮を防ぎます。効果は注射後約1週間で現れ、2〜3ヶ月続きます。
副作用としては、嚥下困難、注射部位の痛み、首の筋力低下などが含まれます。
【頸部ジストニアの薬物療法】
一般的な治療薬として、ドーパミン作動薬(レボドパ)、抗コリン薬(ベンゼトロピン、トリヘキシフェニジル)、バクロフェン、クロナゼパムなどがあります。
副作用として、記憶障害や疲労が生じる場合があります。
【予防】
頸部ジストニアを予防する方法は現時点では確立されていません。
【予後】
頸部ジストニアの予後
頸部ジストニアは生涯続く症状ですが、寿命には影響しません。時間とともに症状が悪化することもあれば、変化が止まることもあります。治療により日常の活動に戻り、不快感を軽減することが可能です。
ボツリヌス毒素による治療は頸部ジストニアを治癒させるか?
いいえ。 頸部ジストニアを治癒する方法はありませんが、ボトックス®により一時的に症状を緩和できます。
【クリニックからのメッセージ】
頸部ジストニアは不快な症状ですが、治療により、症状の緩和が可能です。当院では経口薬治療、ボツリヌス治療、リハビリテーション、物理療法を行います。外科治療が必要な場合は適切な医療機関に紹介します。